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散歩/Walking with Mave 随想/essay

3.11追悼

あのとき、突然大地が揺れて、倒壊の危険を感じ建物から外に出て、立っていられなくて、みなで這うように前の神社の中央に行き、うずくまった。

晴れていたのに、そのあと、急激に気温が下がり、雲が湧き、暗い雲の隙間から、雪が降ってきた。天変地異..だれかれともなく、そんな言葉がつぶやかれた。

いったん揺れが収まると、おのおのうずくまっていた人たちが、小雪舞う中、駆け足で、家に戻っていった。子供は、家族は、大丈夫だろうか。家はどうなっているだろうか。みんなの蒼白な顔が、今でも胸を突いて忘れられない。

その時は、大きな地震が起こったこと、それ以外に、何が起こったのか、わからなかった。

本当にかなしく、おそろしかったのは、そのあとから、始まった。

寒くて暗い記憶。

忘れたくても、忘れられない記憶。

それは、あれを体験した人々の心に、長く、今に至るまで、心に冷たい轍を引き続けている。

もう9年?いや、まだ9年・・・

歳月なんてものはそんなに単純じゃなく

あの時雪が降り積もった冷たい冷たい轍は

それから弱音も吐けず、黙々と営みを続けてきた人たちの、深い痛みが引き続けた轍となり

いまもなお続いている、ちっとも終わってなんかいない

まだ時なんか、全然来ちゃいないのに、立ち上がろうとあがくほど、ひとしれず、足が、胸が、痛む

降り積もる

降り積もる

雪降り積もる轍に、変わらぬ自然と、生きるものの温かさが降り積もる

降り積もる

降り積もる

霧が降り積もり

ぬくもりが降り積もり

あたたかさが降り積もり

これまで直視できなかった冷たい轍を

そっと振り返れたなと感じる日が、ひとしれず、増えてきているのを

否定も肯定もせず

大地が見ている

「ゆっくりでいい」

轍をのみこみ内包したものの強さとやさしさを、何千年と見てきた大地の声が聞こえてくる

やさしい霧に包まれて

今日のみんなが温かい寝床で、安らいで眠れますように

降り積もるやさしさが私たちの心を癒してくれますように

希望が潰えませんように

フレンチブルドッグひろば

作成者: Marple

日本の南で、太陽をさんさんと浴びながら、そこはかとなく暮らしています。
I live vaguely while taking the sun brightly in the south of Japan.

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