風吹けば、葉ずれの音
足踏み込めば、甲羅干しをしていた亀たちが一斉に池の中へ飛び込む
草の匂い
鳥の声
遠くで聞こえる、竹を切る音
でも、突如として、しーんとする一瞬がある
忽然と音が消える瞬間
「神様が通った」なんて、子供の頃は言ったけど
どうしてだろう
この世のすべて生きるもので歌わないものはないと平安の歌人も言ったけど
生きている世界でも
言葉を
音を失う瞬間がある
音がある
音がない
さっきまでいたものが
今はもうない
あること、と、ないこと、
その間には、境界線が
あるのかな
「失うこと」は生きるものの隣に寄り添い、生の輪郭をなぞっている
それは、やわらかくてあたたかい、一枚の布のように、連続したひとつづき
しっとり雨に濡れたピンクローズがやさしくて
静かな朝
ひとつづきに溶け合っている様を、そのままに
不在のうちに存在する、やさしいものたちへ、まなざしをむけて、大切に今をまた生きていこうと思う
あるがまま
ないがまま
すべてそうあるがごと