麦の収穫が終わり、棚田に水が張られた。
どこに住んでも、人の営みは同じだけれど、
山に囲まれ、山に向き合っていると、
生活のあらゆるしがらみや理屈やを振り切って、ぽっかり安心に包まれる瞬間がある
その瞬間が、忘れかけた本来の自分に戻してくれる
こういうことを、ぽそぽそと考えていると、決まってマーベリックはつまらなそうな顔をする。
「そんなことはいいから、僕もお水に入れてください。暑くてかなわないです。」
今日の彼が言いたいことは、きっとそんなところだろう。
シンプルでまっすぐなその要求は、いつも正しい。