♪仰げば尊し わが師の恩
体育館から聴こえてくる、細く清かな声
立ち止まり、耳を澄ますマーベリックと私
仰げば尊し…もう歌われなくなった学校も多いと聞くけれど、この歌が好き
盲目的に何かに頼るわけではなく、
権威に追随するわけではなく、
ただ、人が誰かを尊重し、大切に思う気持ちを忘れてはならないことを思い出させてくれるから
共に乗り越えてきた時を過ごした、大切な人、大切な場所との別れのさみしさと
これからやってくる緩やかで弾力のある期待のふくらみが
講堂のステージのオレンジの光に、一気に凝縮されていく
それはいつしか自分自身の思い出につながり、次の瞬間、私は、千鳥ヶ淵の前で、さざなみを見ていた
薫る花…
放物線は、私をその後、その時願った美しい大地へと運び
上を見上げれば、あの日となんら変わることのない、空と花が、風が光が、私たちをやさしく祝福してくれている
今日は、晴れやかで、通り過ぎる時もゆったりとまどろみ、
人生は、必ずしも、スピードではないことを教えてくれているかのようだ
今日、慣れ親しんだまなびやを旅立つ子供たち。
これから、子供たち、ひとりひとりが、試行錯誤を繰り返して、大人になっていく。
人生には正解や楽しいことばかりではなく、それらと背中合わせに存在する、今までとは比べものにならない数々の矛盾や苦悩と向かい合わなければならない時もくるだろう
いつしか悩み疲れ果て、諦めよう、すべて捨ててしまおうかと思う時さえ訪れるかもしれない
でも、本当の世界は、そこから、初めて見えてくる。
その時、初めて、人は自分自身を見つけ、そんな人生のすべてのパーツをひっくるめて”しあわせ”と呼ぶんだ、ということに気づき、
これが本当の自分自身の人生の始まりなんだと、心震え立つときがくるだろう。
そんな人生の素晴らしい奥行きを、大人は決して子供に、教えることができない。
人は、みな、これらのことを、自分で学んでいくしかないからだ。
だから、子供たちに言ってあげたい。
みんながこれから行うことに、むだなことは、なにひとつないと。
自分自身で考え、歩むその、
ひとつひとつのあゆみがすべて
それぞれのいとおしい、大切な人生になっていくんだと。
そして、彼らが自分の足で歩き、躓いたときには、そっとそばに寄り添い、大丈夫だよと声をかけてあげられるなら・・それが、また、私たちの喜びになる
それぞれの大切にするものをあたため、いつくしむため、
みんな伸びやかに生きていってほしい
ね、マーベリック。
マベと私は、静粛に、盛大に、心膨らませて、2人、たたずむ
卒業式の空の下
みんな みんな
おめでとう
おめでとう