里山の田んぼ沿いを歩く。
今朝は曇っていて、歩くのにちょうどよかった。
時折、立ち止まっては、田んぼの中をのぞくまべ。
オタマジャクシや、アメンボ、ミズスマシなどがいる。
稲の上には、トンボがたくさん。
ここは山のふもとなので、もともと、この時期に飛ぶトンボは多いのだけれど、今年は都市部でも今の時期からトンボがたくさん飛んでるんだっていう。
そうこうして、ふと、稲の苗に目をやれば、ヤゴの抜け殻を発見した。
なんともたくましく、繊細な出で立ちの殻。
本来なら、ヤゴからトンボへと羽化する不思議に思いを馳せるべきところ。しかし今日、なによりもまず釘付けになるのは、その下の、赤い卵である。
スクミリンゴガイ。またの名を、ジャンボタニシという。
ジャンボタニシは、本来、南アメリカのラプラタ川流域に生息する。
それが、現在は、広く世界に生息域を拡大し、外来生物法における要注意外来生物、日本の侵略的外来種ワースト100・世界の侵略的外来種ワースト100リスト選定種の第1種に指定されているという、筋金入りのワルなのだ。
この、食欲旺盛で、稲も食べてしまうというジャンボタニシが、そもそも日本に来た由来は、戦後、食糧難を救うべく、食用として台湾から輸入されたことに端を発する。その養殖は盛んに行われ、1983年には、その養殖場が、35都道府県500カ所にものぼったそうだ。しかし、この食用タニシ計画、想像するに難くはない。当初の目算よりもタニシ食は広まらなかった。採算が取れないとなると、養殖に見切りをつけた業者が、廃業と共にタニシ大量廃棄。その一部が野生化し、現在、全国の田んぼの稲を食い荒らしてるという。
成長した親タニシ自体は、スッポンやカモの大好物で、それらによる駆除が可能らしいが、問題はこの卵である。鮮やかな卵の色は神経毒をもっていることを表す。南米の生息地下では、なんと、あの、ヒアリのみが、この卵を食す天敵なのだそうだ。それを聞いただけで、なんだかすごい話だぞと、南米の自然の荒々しさを想像するにあまりあるんだけども、ただ、この卵、意外なところに弱点があるのだ。その弱点とは、水。なんてことはない、水の中に落とせば、もう孵化出来ないんだって。毒々しい色と南米の食物連鎖の荒々しさを見せつける猛者としては、なんとも口ほどにもない弱点なのだ。
かといって駆逐できないで、こうして毎年毎年、ピンクの卵が増えていくのを見ているのだから、一度生態系に入り込んだものを元どおりのゼロにすることは難しいんだな。
駆逐、か。
元に戻すとか、駆逐するとか、固有種と外来種と、それぞれの立場に立てばそれぞれの、違った景色が見えてきて、身動き取れずに苦しくなる。外来種の話をするときは、いつも、心がチクチクする。
人間の生活と自然の生態系の接点を探して、今日もまた、里山をさまよう。