マーベリックは、一心に、有明海を見つめている。
♪海は 広いな 大きいな
行ってみたいな よその国♪
と歌っていたのも今は昔
“行ってみたい、よその国”は、とても近くなった。
でも、カモメを見ていると、いつも想起されるあの歌は、いまだまだ、新しく胸に響く。
白鳥やかなしからずや空の青海の青にもそまずただよう
牧水のかなしみを自分のことのように感じたあの日のあの気持ちは、いつまでも変わらない。
いつしか自分探しの旅は、自分なくしの旅へとなり、大海原は憧れよりもっと近しいものとなったけれど、
自分をなくせば逆説のように個が際立つ。
青の中に引かれた一線の白は
どこまでも
どこまでも
“個”と世界を
隔てている
松林の中から海を眺め
自由に舞うカモメをみていると
カナシミヨリフカイ
なにかが
そこにあるのだと
マーベリックは思った