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随想/essay

『イヌは何を考えているか』あるいはボクのこと

前回紹介した化学同人さんの本、グレゴリー・バーンズ博士著「イヌは何を考えているか」を怪訝な顔で見つめるマーベリックです

イヌの気持ちって、そりゃ、何が書かれてるのか、気になるよね、おまべ

「MRIってなに?」

筒の中に入って磁力で頭の中を見るやつ

この本の著者のね、バーンズ博士は、犬を自ら進んでMRIに入れるように訓練してね、脳の中を測定するというドッグプロジェクトを立ち上げたんだよ

脳から犬の心の動きを調べるという研究のためにね

みんなこわくないの?

だいじょうぶ、

バーンズ博士はみんなにやさしいんだよ

調べるのは、みんなが

”ちょっとMRIでも入っとくかな~”

みたいに気乗りがするときだけで、決して強要しないことにしてるの

そうなの?ちょっと温泉にでも入っとくかな~みたいなノリで?

で、で、どうだったの?

ぼくたちの頭のなか!

そりゃおまべ、今さら確認しなくたって、みんなに感情があることはわかってる

みんなが私たち人間と同じような感覚でいるんだってことも。

そして実際、脳を調べた博士の予測では、その通りだったんだ

えっ、じゃあ、これとは違うの?

前に読んだ、これ!

よく覚えてたね、まべ

そうそう、その本には、完全にやられたんだったよね

犬に「こころ」なんてないんだー、あるのは反応だけなんだーみたいな結論で、あちゃ~ってなったやつ

反応だけ?

ざっくりすぎませんか

それでね、バーンズ博士はそのような行動主義者の批判に、敢然と立ち向かっているの

バーンズ博士はこれまでイヌと過ごしてきて、イヌを自動機械のようにとらえる行動主義の考え方はとうてい受け入れられないって

イヌには個性も好き嫌いもあり、その行動には目的があって、葛藤もあれば後悔もする。行動主義モデルが認める以上に高度な思考力を持っているのは明らかであるって言ってるんだよ

まべ、博士はね、なぜこのような研究をしようとしたかっていうと、飼い犬のパグのニュートンくんが亡くなって、ニュートンくんが自分を愛していたかすごく気になっちゃったからってこともあったんだけど

それだけじゃなくて

動物にも心があることを証明できたら、動物たちがもっと大切にされる世の中になるんじゃないかって

だからみんなのことを代弁したいし、

そしてそれがこれからの私たちの幸せにもかかわる大切なことなんだと考えるんだって

はかせ、いいひと

しかも、博士の愛犬の名前が「ニュートン」

だなんて、いかにも”博士”らしいね

そうだね

そしてこの本の真骨頂は、最後の11章とエピローグにあると思うの

そこに書かれている博士の優しくて熱い思いと、科学を取り巻く気がかりな現状には、いろんな意味で胸を打たれるよ

面白いなと思った1つはアメリカニューヨークで行われたイヌの親権をめぐる裁判が申し立てられてた話でね

その時、そもそもイヌの親権をめぐる問題が審理に値するのかというところから考えなくてはいけなくて、結局裁判をするのは妥当と判断されたのだけど、その理由として、博士のドッグプロジェクトが例に挙げられたんだって

その判事の考えは、

MRIを使ってイヌの幸福や人間に対する感情を正確に測定するのは科学的に可能であっても現実的ではない

しかし、ドッグプロジェクトが『ニューヨーク・タイムズ紙』に掲載され、世間の注目を集めたことは、イヌが所有物ではないという認識が広まってきているからにはかならない。それが、この裁判を開くことの理由だ、と。

科学的であるかないかに勝って、そんな世間の”雰囲気”(現実)が、社会を動かす・・・

たしかに社会ってそういうものかも・・・

ふと、自分の手元を見ると

マーベリック、

もう飽きちゃったね

すぴぴー

社会がネットの中で膨大な情報やチャネルとともに階層化され、つながりも増え便利になった一方で、互いにわからないもの、共有できないものも増えていて、

ふと、無力感のようなものに包まれることが多くなったけれど

そうした中で、マーベリックのすぴぴーという寝息と温かさは、残されたたしかな生活の実感

この子たちの心がぽっかり浮かんでいる

私たちの心がとなりにぽっかりたゆたっている

自分自身の記憶の海と日々のむせかえるような情報の波のさ中、生活の実感は、錨のようにたゆたって

それをぼんやり見つめた先には希望があることを教えてくれる

社会の気運が世界を動かしていくなら、わたしたちは、日々行うひとつひとつすべてのことで社会の”あたりまえ”をつくってる

そうして醸成された社会の”雰囲気”は、未来の動物たちと私たちの次のしあわせにつながっていくんだって、

そんな希望

さて今日からも、科学—-このバーンズ博士のように優しい動機に突き動かされている科学—-という強力な助っ人と

手を尽くしていけば届くと信じる勇気をひとつ、携えて

今日も生活することで、みんなと一緒に動物たちと幸せに生きる社会を作ることに参加しよう

すっかり寝入ったマーベリックの夢の中にお邪魔して、いつかのさくらのじゅうたんの上から

そんな今と未来を思って

フレンチブルドッグひろば

作成者: Marple

日本の南で、太陽をさんさんと浴びながら、そこはかとなく暮らしています。
I live vaguely while taking the sun brightly in the south of Japan.

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